マリア・プロジェクト 著:楡 周平
読んでいる途中、目を背けたくなるようなシーンが所々出てきますが、総論としては、なかなか読み応えのある内容でした。楡周平氏が書いただけあって、目の前にその光景が映し出されるような描写はさすがです。
この本のタイトル「マリア・プロジェクト」は、まさに聖母マリア、つまり神を創造するプロジェクトという意味だ。これだけでは、何のことかさっぱり分からないかもしれない。私もこの本の導入部分だけからは想像もできなかった。子供は神から授かったものとよく言うが、その子供を自由自在に自分が思った通りに作ってしまうのだ。まさに、生命の弄び。さらに、副産物としてできてしまった子供は、臓器売買の道具として使われてしまう。こんなことが、もし現実にあったとしたならば、それは神業?いやいや悪魔の所業だ。
(あらすじ)
大道寺産業社長の一人娘である諒子は、瀬島と恋に落ち、その子を身籠ってしまった。もちろん、跡取り息子としてふさわしくない瀬島との子は、すぐさま処分されてしまった。中絶だ。そのあと二人は当然別れた。しかし、この時の胎児がのちのちこの物語を驚愕のものとする。
数年後、瀬島は、マニラで商社マンとして、現地の優秀な部下マリオを従えてビル建設の仕事をしていた。そんなとき、偶然諒子とばったり会ってしまった。諒子がマニラに訪れた理由は、瀬島と別れたあと、見合いで結婚した夫との間にできた子供の病気を治療するためだ。病気とは、拡張型心筋症で、その治療は、心臓移植だった。移植手術は成功し、日本へ帰ったのだが、感染症のため帰らぬ人となった。実は諒子は、子宮外妊娠のため卵管破裂をおこし、子宮を摘出していた。つまり、子供を産めない体なのだ。
そのころ、瀬島の部下であるマリオの弟が誘拐されてしまった。瀬島がマリオから事情を聞く際、マリオの正体を知ってしまった。フィリピン最大のスラムであるトンド出身者だったのだ。普通なら今の職に就けるはずもないが、あの手この手を使い、やっとの思いで今にたどり着いたのだ。瀬島は、もちろん非難なんかしなかった。それは、過去に自分も家系、格といった自分ではどうしようもないことで差別を受けてきたからだ。よくよく調べてみると、マリオの弟以外にもトンドから消えた子供たちが数人いた。それが、何を物語っているかすぐには分からなかった。
絶望の縁に立たされた諒子は、かかりつけの医者新城から信じられない提案を受けた。新城は過去に諒子の中絶手術をし、胎児を拾い上げた医者だ。その男から、実は胎児は女の子で、その卵子が保管されているというのだ。しかも、その卵子はいつでも受精できる状態で、夫の精子と掛け合わせ海外で代理母を探せば、血のつながった子供を手にすることができると。諒子は、子宮こそ摘出したが、卵巣はまだ残っていた。あえて新城が胎児の卵子を提案したのは、過去に愛した瀬島の血を受け継ぐことができ、諒子が必ずその話に乗ってくると計算してのことだった。新城は、金儲けのためだけに、生命を弄んでいる一人だった。
諒子は、その件を瀬島へ相談した。しかし、瀬島は何か違和感を覚えた。タイミングが良すぎるのだ。前回の心臓移植は、諒子が子宮摘出後余り時間をおかずに、脳死となった幼児がドナーとして見つかっており、今回も新城からマニラで行なうと言うことだった。そこで、瀬島は、諒子に亡くなった子供の心臓のDNA鑑定を依頼した。運良く、息子の心臓は病院の研究用として保管されており、鑑定結果はすぐにでた。その結果は、驚愕のものとなった。なんと息子に移植された心臓は、遺伝子学的に諒子の血を引き継いでいるのだ。つまり、諒子の子供の心臓をもう一人の子供へ移植したのだ。
この結果を聞いた瀬島は、まちがいなく胎児の卵子から子供が作られ、臓器売買が行なわれていると考えた。また、トンドから消えた子供たちも、臓器提供として、また代理母としてさらわれたに違いない。しかし、犯人に繋がる情報は、何一つなかった。
ところが・・・
ここから先は、ぜひ本を読んでみてください。
この本から、フィリピンの情勢や臓器売買の一面を見ることができます。想像するだけで、空恐ろしくなりますが、改めて生命について考えさせられる本でもあります。
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この本のタイトル「マリア・プロジェクト」は、まさに聖母マリア、つまり神を創造するプロジェクトという意味だ。これだけでは、何のことかさっぱり分からないかもしれない。私もこの本の導入部分だけからは想像もできなかった。子供は神から授かったものとよく言うが、その子供を自由自在に自分が思った通りに作ってしまうのだ。まさに、生命の弄び。さらに、副産物としてできてしまった子供は、臓器売買の道具として使われてしまう。こんなことが、もし現実にあったとしたならば、それは神業?いやいや悪魔の所業だ。
(あらすじ)
大道寺産業社長の一人娘である諒子は、瀬島と恋に落ち、その子を身籠ってしまった。もちろん、跡取り息子としてふさわしくない瀬島との子は、すぐさま処分されてしまった。中絶だ。そのあと二人は当然別れた。しかし、この時の胎児がのちのちこの物語を驚愕のものとする。
数年後、瀬島は、マニラで商社マンとして、現地の優秀な部下マリオを従えてビル建設の仕事をしていた。そんなとき、偶然諒子とばったり会ってしまった。諒子がマニラに訪れた理由は、瀬島と別れたあと、見合いで結婚した夫との間にできた子供の病気を治療するためだ。病気とは、拡張型心筋症で、その治療は、心臓移植だった。移植手術は成功し、日本へ帰ったのだが、感染症のため帰らぬ人となった。実は諒子は、子宮外妊娠のため卵管破裂をおこし、子宮を摘出していた。つまり、子供を産めない体なのだ。
そのころ、瀬島の部下であるマリオの弟が誘拐されてしまった。瀬島がマリオから事情を聞く際、マリオの正体を知ってしまった。フィリピン最大のスラムであるトンド出身者だったのだ。普通なら今の職に就けるはずもないが、あの手この手を使い、やっとの思いで今にたどり着いたのだ。瀬島は、もちろん非難なんかしなかった。それは、過去に自分も家系、格といった自分ではどうしようもないことで差別を受けてきたからだ。よくよく調べてみると、マリオの弟以外にもトンドから消えた子供たちが数人いた。それが、何を物語っているかすぐには分からなかった。
絶望の縁に立たされた諒子は、かかりつけの医者新城から信じられない提案を受けた。新城は過去に諒子の中絶手術をし、胎児を拾い上げた医者だ。その男から、実は胎児は女の子で、その卵子が保管されているというのだ。しかも、その卵子はいつでも受精できる状態で、夫の精子と掛け合わせ海外で代理母を探せば、血のつながった子供を手にすることができると。諒子は、子宮こそ摘出したが、卵巣はまだ残っていた。あえて新城が胎児の卵子を提案したのは、過去に愛した瀬島の血を受け継ぐことができ、諒子が必ずその話に乗ってくると計算してのことだった。新城は、金儲けのためだけに、生命を弄んでいる一人だった。
諒子は、その件を瀬島へ相談した。しかし、瀬島は何か違和感を覚えた。タイミングが良すぎるのだ。前回の心臓移植は、諒子が子宮摘出後余り時間をおかずに、脳死となった幼児がドナーとして見つかっており、今回も新城からマニラで行なうと言うことだった。そこで、瀬島は、諒子に亡くなった子供の心臓のDNA鑑定を依頼した。運良く、息子の心臓は病院の研究用として保管されており、鑑定結果はすぐにでた。その結果は、驚愕のものとなった。なんと息子に移植された心臓は、遺伝子学的に諒子の血を引き継いでいるのだ。つまり、諒子の子供の心臓をもう一人の子供へ移植したのだ。
この結果を聞いた瀬島は、まちがいなく胎児の卵子から子供が作られ、臓器売買が行なわれていると考えた。また、トンドから消えた子供たちも、臓器提供として、また代理母としてさらわれたに違いない。しかし、犯人に繋がる情報は、何一つなかった。
ところが・・・
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