異端の大義(上) 著:楡 周平

朝倉恭介シリーズを読み終えても、まだまだ楡周平作品はあります。朝倉恭介シリーズのようなエンターテイメント小説以降、社会問題や経済問題を題材とした作品が多くなりますが、今回はその中で「異端の大義」についてご紹介します。

この作品は経済小説で、しかもよくあるバブル後の企業が立て直しに翻弄される姿を題材としたものです。リストラ、工場閉鎖、企業合併と難題が山積しており、その中で企業人は右往左往します。しかし、いつの世も保身的な会社はいるもので、会社の都合のいいように処理を進めようとします。そんな中、会社の現状を理解しつつも切り捨てられていく従業員に誠心誠意対応しようとする人物がいたのです。それが、主人公の高見龍平です。



(あらすじ)
主人公の高見は、景気絶好期に東洋電器半導体事業拡大のためアメリカへ渡った。しかし、ほどなくして半導体バブルははじけ撤退を余儀なくされる。東京本社に戻った高見は、半導体事業から離れ市場調査の任務にあたることになる。同期であり人事本部長の湯下に挨拶に行った際、大規模な人員整理の話を聞き、さらにその手法を知ると暗澹たる思いになった。表向きは希望退職者を募るものだったが、実際はいかにも会社都合の指名解雇だったのだ。高見は意見したが、今のポストでは何の力もない。
その頃並行して、会社は水面下で半導体事業部を切り離し、ライバル会社と新会社を設立することを検討していた。新会社を作ると言っても、今の人員をそのまま転籍するはずもない。もちろん、そこでも大規模なリストラが発生する。
一方、湯下は女にだらしがなく、もと社員を愛人とする。さらに、子供まででき正妻に離婚を切り出した。このことが高見の耳に入り、湯下の将来を慮って思い直すよう進言したが、逆に湯下の逆鱗に触れ、ちょうど新会社設立前の半導体工場閉鎖業務の人員を探していたため、高見に人事としては異例の社長決裁での辞令が下る。高見はちょうどそのとき、父が癌に冒され、そばを離れられる時期ではなかった。そのため、一時湯下に人事内容の変更を願い出ようとしたが、もと同じ半導体事業で携わってきた仲間たちを無下にも出来ず、せめて理解ある自分が見送ってやりたいと引き受けた。しかし、その仕事はそう容易いものではなかった。



あまりあって欲しくない会社ではありますが、現実にはこのような会社はごまんとあるのでしょう。自分の会社は大丈夫だろうか。こんな不当人事のもとで働く従業員はやりきれない。高見のような正義感の強い人物のもと働きたいものです。

異端の大義 (上)異端の大義 (上)
(2006/03/16)
楡 周平

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