不祥事 著:池井戸 潤

著者 池井戸氏は銀行入行後独立した方で、銀行にまつわる著書がほとんどです。また、その大半を銀行特有の体質や不祥事を題材にしたもので、銀行の裏の一面を垣間みるには手っ取り早い本です。

今回ご紹介する本も、まさにその類いのもので、ずばり「不祥事」です。経済小説の多くは、難しい金融用語が多々登場しますが、この本はそのようなものは一切ありません。経済物初心の方には打って付けです。逆に経済小説がお好きな方には、物足りなさを感じるかもしれません。しかし、この本には銀行体質の暴露だけでなく、主人公である花咲舞の正義をまざまざと見せつけられ、普段会社勤めで難しい組織社会の狭間に悩んでいる方を、心身ともにすっきりさせることができるのではと思いました。
構成は、短編集的なものになっているので、ちょっと空いた時間にという方にも十分読んでいただけるものです。



(さわり)
事務部に転勤になった相馬とその部下花咲が、銀行組織を改善すべく、各支店、営業所を臨店指導をしていく中で起きる問題を小説にしたものです。
銀行員の中には、間違いなくエリートと呼ばれる人たちがおり、自分の出世のためであればどんなことでもいとも簡単にやってのけてしまう。いじめによる潰し、責任転嫁、貶め。ありとあらゆることを出世、保身のためにする。そこに、お客様優位などない。
そやつらを女である花咲が一刀両断する。あつい情熱と強い信念を持って。まさに、爽快である。



銀行員の方、気を悪くしないでください。世の中には、そのような方もいると言うことで書かれた本だと思っています。

不祥事 (講談社文庫)不祥事 (講談社文庫)
(2007/08/11)
池井戸 潤

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絵本 オオカミのごちそう 作:木村裕一

ドジなオオカミのお話です。絵もユーモアたっぷりで、笑い話に拍車をかけています。小さなお子さんに読んであげるのにぴったりな本であると同時に、年長から低学年くらいの子供が読むのにも最適ではないでしょうか。ぜひぜひ子供たちにこの本を触れさせてあげてください。

話の内容は、オオカミが1ぴきのコブタを食べ損ねたものです。なぜ、食べ損ねたか。そこが重要です。

オオカミのごちそうオオカミのごちそう
(1999/04)
木村 裕一田島 征三

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マリア・プロジェクト 著:楡 周平

読んでいる途中、目を背けたくなるようなシーンが所々出てきますが、総論としては、なかなか読み応えのある内容でした。楡周平氏が書いただけあって、目の前にその光景が映し出されるような描写はさすがです。

この本のタイトル「マリア・プロジェクト」は、まさに聖母マリア、つまり神を創造するプロジェクトという意味だ。これだけでは、何のことかさっぱり分からないかもしれない。私もこの本の導入部分だけからは想像もできなかった。子供は神から授かったものとよく言うが、その子供を自由自在に自分が思った通りに作ってしまうのだ。まさに、生命の弄び。さらに、副産物としてできてしまった子供は、臓器売買の道具として使われてしまう。こんなことが、もし現実にあったとしたならば、それは神業?いやいや悪魔の所業だ。



(あらすじ)
大道寺産業社長の一人娘である諒子は、瀬島と恋に落ち、その子を身籠ってしまった。もちろん、跡取り息子としてふさわしくない瀬島との子は、すぐさま処分されてしまった。中絶だ。そのあと二人は当然別れた。しかし、この時の胎児がのちのちこの物語を驚愕のものとする。
数年後、瀬島は、マニラで商社マンとして、現地の優秀な部下マリオを従えてビル建設の仕事をしていた。そんなとき、偶然諒子とばったり会ってしまった。諒子がマニラに訪れた理由は、瀬島と別れたあと、見合いで結婚した夫との間にできた子供の病気を治療するためだ。病気とは、拡張型心筋症で、その治療は、心臓移植だった。移植手術は成功し、日本へ帰ったのだが、感染症のため帰らぬ人となった。実は諒子は、子宮外妊娠のため卵管破裂をおこし、子宮を摘出していた。つまり、子供を産めない体なのだ。
そのころ、瀬島の部下であるマリオの弟が誘拐されてしまった。瀬島がマリオから事情を聞く際、マリオの正体を知ってしまった。フィリピン最大のスラムであるトンド出身者だったのだ。普通なら今の職に就けるはずもないが、あの手この手を使い、やっとの思いで今にたどり着いたのだ。瀬島は、もちろん非難なんかしなかった。それは、過去に自分も家系、格といった自分ではどうしようもないことで差別を受けてきたからだ。よくよく調べてみると、マリオの弟以外にもトンドから消えた子供たちが数人いた。それが、何を物語っているかすぐには分からなかった。
絶望の縁に立たされた諒子は、かかりつけの医者新城から信じられない提案を受けた。新城は過去に諒子の中絶手術をし、胎児を拾い上げた医者だ。その男から、実は胎児は女の子で、その卵子が保管されているというのだ。しかも、その卵子はいつでも受精できる状態で、夫の精子と掛け合わせ海外で代理母を探せば、血のつながった子供を手にすることができると。諒子は、子宮こそ摘出したが、卵巣はまだ残っていた。あえて新城が胎児の卵子を提案したのは、過去に愛した瀬島の血を受け継ぐことができ、諒子が必ずその話に乗ってくると計算してのことだった。新城は、金儲けのためだけに、生命を弄んでいる一人だった。
諒子は、その件を瀬島へ相談した。しかし、瀬島は何か違和感を覚えた。タイミングが良すぎるのだ。前回の心臓移植は、諒子が子宮摘出後余り時間をおかずに、脳死となった幼児がドナーとして見つかっており、今回も新城からマニラで行なうと言うことだった。そこで、瀬島は、諒子に亡くなった子供の心臓のDNA鑑定を依頼した。運良く、息子の心臓は病院の研究用として保管されており、鑑定結果はすぐにでた。その結果は、驚愕のものとなった。なんと息子に移植された心臓は、遺伝子学的に諒子の血を引き継いでいるのだ。つまり、諒子の子供の心臓をもう一人の子供へ移植したのだ。
この結果を聞いた瀬島は、まちがいなく胎児の卵子から子供が作られ、臓器売買が行なわれていると考えた。また、トンドから消えた子供たちも、臓器提供として、また代理母としてさらわれたに違いない。しかし、犯人に繋がる情報は、何一つなかった。
ところが・・・



ここから先は、ぜひ本を読んでみてください。
この本から、フィリピンの情勢や臓器売買の一面を見ることができます。想像するだけで、空恐ろしくなりますが、改めて生命について考えさせられる本でもあります。

マリア・プロジェクト (文芸シリーズ)マリア・プロジェクト (文芸シリーズ)
(2001/12)
楡 周平

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絵本 そらまめとわらとすみ 日本民話

小さなこどもが好きそうなお話です。「そらまめ と わら と すみ」どうしてこの組み合わせなのか、???がいっぱいですが、内容は笑い話でありながら、なるほどっと思えるエピソードにもなっています。いつものようにあらすじを書いてしまうと読まれたときにおもしろくないので、さわりだけにします。

一粒のそらまめと一本のわらと一個のすみが、散歩に出かけることになりました。進むうちに橋のない川にさしかかりました。そこで、3人は何とかして渡ろうとします。そのときの出来事がこの本の主であり、おもしろいところです。また、そのときのそらまめは、いまとは姿が違ったようです。今の姿になった理由も、この本で明らかになります。


そらまめとわらとすみ―日本民話 (たんぽぽえほんシリーズ)そらまめとわらとすみ―日本民話 (たんぽぽえほんシリーズ)
(2008/01)
川上 越子

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絵本 たった さんびきだけの いけ 作:宇治 勲

こどもたちにありがちな、「自分勝手」「わがまま」「自己中」をキーワードにしたお話です。なかなか良いお話でした。



(あらすじ)
登場人物は、カメとおたまじゃくしとさかなで、小さな池にその三匹だけで暮らしていました。その場その場で相手の気持ちなど考えずに、自分中心に第三者を巻き込みながら振る舞うおたまじゃくしは、ある日、陸でも生きていけるカメのことを仲間はずれにしました。カメはそれからいつもしょんぼりしていました。しばらくたったある日、おたまじゃくしに異変が起きました。そう、足がはえ手がはえ、とうとうカエルになったのです。そうなると、今度は水の中にしか住めないさかなを仲間はずれにし始めました。
その年の夏はあつく、雨が一滴も降らず、池の水は瞬く間に少なくなっていきました。見ると水の中でしか生きられないさかなが、たいへん苦しそうにしていました。それを見てカエルは、さかなのことを思い、今までの身勝手さを反省しました。なんとかして助けよう。カエルは、隣の川の水を引こうとひたすら一生懸命穴を掘り始めました。願いかなって、池には水があふれ、三匹は仲良く暮らしました。



いじめはほんと些細なことで起きるもの。相手の気持ちをちょっと考える時間を持てば防げたのに、いつしか周りまでもそのいじめに参加してる。相手への心遣いを大切にしたいものです。

たったさんびきだけのいけ (PHPにこにこえほん)たったさんびきだけのいけ (PHPにこにこえほん)
(2007/04/03)
宇治 勲

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タックス・シェルター 著:幸田 真音

幸田真音さんの「タックス・シェルター」をご紹介しようと思います。
タックスシェルターとは、「租税回避」のことで、如何に支払う税金を少なくするか、支払わなくてよい方法を考えるかと言うことです。この本では、「税金とは」と考えさせられる内容になっています。



(あらすじ)
主な登場人物は、谷福証券財務部長 深田と深田に金関係でまとわりつく坂東、国税局調査官 宮野。深田は谷福証券社長に大変かわいがられ、二人の間に誰にも知られてはならない秘密があった。ところが、その秘密の処遇を福田に伝えないまま社長は、突然脳溢血で倒れそのまま帰らぬ人となった。その秘密とは、「ケイマンにある海外法人」。いわゆる、租税回避としてのペーパーカンパニーだ。そこにかなりの金額を残し、深田に管理をさせたまま社長がいなくなってしまった。幸い、この会社は社長個人のもので、谷福証券とは関係のないものだった。ところが、ある事により谷福証券の資産が入り込んできた。ある事とは、社長が趣味で買い集めていた絵画(会社資産)の売却で、オークションで落札された際、購入資金の一部をこの海外法人へ入金する事が条件だった。その売却の手伝いをしたのが坂東だ。深田は、坂東へこの資金処理について相談すると、別の法人を建てそこに転送する事を提案してきた。マネーロンダリングだ。その際、坂東は条件をつけてきた。一時的にケイマンにある資金を運用させて欲しいと。坂東の知人 稗田がリスクの高いFXや原油商品先物で運用し、結果的に元資産の倍以上に膨れ上がった。こうなると、人間欲が出てくる。坂東が深田と稗田の3人で、運用益分を山分けしようといい始め、なかなか踏ん切りがつかなかった深田も、半ば坂東たちに押し切られる形で香港に口座を開き、そこに資金転送してしまった。
そのころ、谷福証券は国税局による調査を受けており、深田はこの件がバレルのではとやきもきしていたが、そこは財務部長、抜かりない処理をしていた為に、特に指摘なく調査を完了した。このとき、深田はある切っ掛けで調査官であった宮野と親しくなる。しかし、この時点から転落へと導かれ、取り返しのつかない結末へと向かう。

つづきは、ぜひ本を読んで。


外為証拠金取り引き(FX)や商品先物など金融知識を触りでも持っていた方が、この本は読みやすいと思います。知識がないと厳しいかも。また、この本の魅力として、深田と宮野、そして宮野の娘いづみの人間関係があります。金への欲望と人間ドラマを同時に堪能できます。
しかし、結末はあまりにあっけなく、そして中途半端だったため、すっきりせず不満が残っています。尻切れとんぼ状態だ。

タックス・シェルタータックス・シェルター
(2006/09)
幸田 真音

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