マリア・プロジェクト 著:楡 周平

読んでいる途中、目を背けたくなるようなシーンが所々出てきますが、総論としては、なかなか読み応えのある内容でした。楡周平氏が書いただけあって、目の前にその光景が映し出されるような描写はさすがです。

この本のタイトル「マリア・プロジェクト」は、まさに聖母マリア、つまり神を創造するプロジェクトという意味だ。これだけでは、何のことかさっぱり分からないかもしれない。私もこの本の導入部分だけからは想像もできなかった。子供は神から授かったものとよく言うが、その子供を自由自在に自分が思った通りに作ってしまうのだ。まさに、生命の弄び。さらに、副産物としてできてしまった子供は、臓器売買の道具として使われてしまう。こんなことが、もし現実にあったとしたならば、それは神業?いやいや悪魔の所業だ。



(あらすじ)
大道寺産業社長の一人娘である諒子は、瀬島と恋に落ち、その子を身籠ってしまった。もちろん、跡取り息子としてふさわしくない瀬島との子は、すぐさま処分されてしまった。中絶だ。そのあと二人は当然別れた。しかし、この時の胎児がのちのちこの物語を驚愕のものとする。
数年後、瀬島は、マニラで商社マンとして、現地の優秀な部下マリオを従えてビル建設の仕事をしていた。そんなとき、偶然諒子とばったり会ってしまった。諒子がマニラに訪れた理由は、瀬島と別れたあと、見合いで結婚した夫との間にできた子供の病気を治療するためだ。病気とは、拡張型心筋症で、その治療は、心臓移植だった。移植手術は成功し、日本へ帰ったのだが、感染症のため帰らぬ人となった。実は諒子は、子宮外妊娠のため卵管破裂をおこし、子宮を摘出していた。つまり、子供を産めない体なのだ。
そのころ、瀬島の部下であるマリオの弟が誘拐されてしまった。瀬島がマリオから事情を聞く際、マリオの正体を知ってしまった。フィリピン最大のスラムであるトンド出身者だったのだ。普通なら今の職に就けるはずもないが、あの手この手を使い、やっとの思いで今にたどり着いたのだ。瀬島は、もちろん非難なんかしなかった。それは、過去に自分も家系、格といった自分ではどうしようもないことで差別を受けてきたからだ。よくよく調べてみると、マリオの弟以外にもトンドから消えた子供たちが数人いた。それが、何を物語っているかすぐには分からなかった。
絶望の縁に立たされた諒子は、かかりつけの医者新城から信じられない提案を受けた。新城は過去に諒子の中絶手術をし、胎児を拾い上げた医者だ。その男から、実は胎児は女の子で、その卵子が保管されているというのだ。しかも、その卵子はいつでも受精できる状態で、夫の精子と掛け合わせ海外で代理母を探せば、血のつながった子供を手にすることができると。諒子は、子宮こそ摘出したが、卵巣はまだ残っていた。あえて新城が胎児の卵子を提案したのは、過去に愛した瀬島の血を受け継ぐことができ、諒子が必ずその話に乗ってくると計算してのことだった。新城は、金儲けのためだけに、生命を弄んでいる一人だった。
諒子は、その件を瀬島へ相談した。しかし、瀬島は何か違和感を覚えた。タイミングが良すぎるのだ。前回の心臓移植は、諒子が子宮摘出後余り時間をおかずに、脳死となった幼児がドナーとして見つかっており、今回も新城からマニラで行なうと言うことだった。そこで、瀬島は、諒子に亡くなった子供の心臓のDNA鑑定を依頼した。運良く、息子の心臓は病院の研究用として保管されており、鑑定結果はすぐにでた。その結果は、驚愕のものとなった。なんと息子に移植された心臓は、遺伝子学的に諒子の血を引き継いでいるのだ。つまり、諒子の子供の心臓をもう一人の子供へ移植したのだ。
この結果を聞いた瀬島は、まちがいなく胎児の卵子から子供が作られ、臓器売買が行なわれていると考えた。また、トンドから消えた子供たちも、臓器提供として、また代理母としてさらわれたに違いない。しかし、犯人に繋がる情報は、何一つなかった。
ところが・・・



ここから先は、ぜひ本を読んでみてください。
この本から、フィリピンの情勢や臓器売買の一面を見ることができます。想像するだけで、空恐ろしくなりますが、改めて生命について考えさせられる本でもあります。

マリア・プロジェクト (文芸シリーズ)マリア・プロジェクト (文芸シリーズ)
(2001/12)
楡 周平

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異端の大義(下) 著:楡 周平

不当な人事で閑職へ追いやられ、自ら辞表を出した者が、ある転機により同業外資系の有力企業へ転職する。その企業は日本上陸を虎視眈々と狙っていたが、元会社の経営悪化により更なる転機が巡ってくる。それは、自らの手で代々続いた一族の支配から呪縛を解き放ち、従業員および元会社を救済できる買収劇に参画できたことだ。
主人公は、終始一貫して「企業は人なり」と思い続け、転職先企業が買収を計画する時も欧米的やり方ではなく、あくまで従業員に不安を与えず、ビジョンを早く明確に知らせることだと言っていた。こういった信念を貫ける人が、この世の中どれ程いるものだろうか。



(あらすじ)
岩手工事の閉鎖業務を遂行している最中、事件は起きた。やめた元従業員が自殺したのだ。工事長はお見舞いにいくのは自重しろと指示を出す。しかし、高見は元従業員の気持ちを汲み取り、誠実な対応をするため、すぐさま通夜へ参列した。その帰りにマスコミにインタビューを受け会社不利と取られるような発言をしてしまう。
このことから、会社側は高見を問題視し、また、人事部長である湯下の高見への個人的恨みを晴らすべく、不当人事を発令した。それは子会社への出向で、且つ今まで経験もした事がない営業だった。
当然、芳しい成績も上げられず、また売り上げのカラクリを知り、部下の不正を正そうとした結果、社長から素人扱いされ立場を失う。湯下の術中にはまった形ではあるが、転職先を探し始める。そんな最中、商品展示会で仕事をしているとき、アメリカ時代に出会った同業者カイザーの有力人物ノーマンに会う。今までの事情を話すと、ノーマンはすぐカイザーへ来ないかと誘い、高見も快く受け入れる。
カイザーでの最初の仕事は、中国へ赴任しマーケティングをする事にあった。東洋電器とは違い充実した生活を送る事が出来た。そんな中、カイザーが過去の日本上陸の失敗経験を活かし、再度上陸を狙っている事を上司から聞く。さらに、その矛先を東洋電器へ向けている事も知る。
東洋電器はというと、今まで大リストラや事業整理を行なってきたが、やり方に失敗し全て裏目に出てしまった。結果とてつもない負債を抱えてしまう。それを聞いた高見は、なんとか自分の手で救ってやりたいとの思いから、カイザー内で持論を展開し、受け入れられていった。



実際に、どう東洋電器が再生プランを策定し、再建に向かうのかは、読んでみてのお楽しみ。主人公の高見の信念は、終始一貫しており、高見のような上司のもと働きたいものだ。また、最後に湯下の結末も惨めではあるが、東洋電器への思いは高見と同じだったかもしれない。考え方の違いにより明暗を分けた形だ。

異端の大義 (下)異端の大義 (下)
(2006/03/16)
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異端の大義(上) 著:楡 周平

朝倉恭介シリーズを読み終えても、まだまだ楡周平作品はあります。朝倉恭介シリーズのようなエンターテイメント小説以降、社会問題や経済問題を題材とした作品が多くなりますが、今回はその中で「異端の大義」についてご紹介します。

この作品は経済小説で、しかもよくあるバブル後の企業が立て直しに翻弄される姿を題材としたものです。リストラ、工場閉鎖、企業合併と難題が山積しており、その中で企業人は右往左往します。しかし、いつの世も保身的な会社はいるもので、会社の都合のいいように処理を進めようとします。そんな中、会社の現状を理解しつつも切り捨てられていく従業員に誠心誠意対応しようとする人物がいたのです。それが、主人公の高見龍平です。



(あらすじ)
主人公の高見は、景気絶好期に東洋電器半導体事業拡大のためアメリカへ渡った。しかし、ほどなくして半導体バブルははじけ撤退を余儀なくされる。東京本社に戻った高見は、半導体事業から離れ市場調査の任務にあたることになる。同期であり人事本部長の湯下に挨拶に行った際、大規模な人員整理の話を聞き、さらにその手法を知ると暗澹たる思いになった。表向きは希望退職者を募るものだったが、実際はいかにも会社都合の指名解雇だったのだ。高見は意見したが、今のポストでは何の力もない。
その頃並行して、会社は水面下で半導体事業部を切り離し、ライバル会社と新会社を設立することを検討していた。新会社を作ると言っても、今の人員をそのまま転籍するはずもない。もちろん、そこでも大規模なリストラが発生する。
一方、湯下は女にだらしがなく、もと社員を愛人とする。さらに、子供まででき正妻に離婚を切り出した。このことが高見の耳に入り、湯下の将来を慮って思い直すよう進言したが、逆に湯下の逆鱗に触れ、ちょうど新会社設立前の半導体工場閉鎖業務の人員を探していたため、高見に人事としては異例の社長決裁での辞令が下る。高見はちょうどそのとき、父が癌に冒され、そばを離れられる時期ではなかった。そのため、一時湯下に人事内容の変更を願い出ようとしたが、もと同じ半導体事業で携わってきた仲間たちを無下にも出来ず、せめて理解ある自分が見送ってやりたいと引き受けた。しかし、その仕事はそう容易いものではなかった。



あまりあって欲しくない会社ではありますが、現実にはこのような会社はごまんとあるのでしょう。自分の会社は大丈夫だろうか。こんな不当人事のもとで働く従業員はやりきれない。高見のような正義感の強い人物のもと働きたいものです。

異端の大義 (上)異端の大義 (上)
(2006/03/16)
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朝倉恭介 Cの福音・完結編 著:楡 周平

いよいよ朝倉恭介シリーズ完結編のご紹介です。
悪を美とする朝倉恭介の結末が本編で明らかになります。

本編では、なんとクーデタークラッシュで登場した川瀬雅彦が登場し、朝倉恭介と対峙します。よく見ると、この二人には共通点が多く、正の方向に進んだのが川瀬雅彦で、負の方向に進んだのが朝倉恭介と言えます。また、前作のターゲットで恭介を利用したCIAも恭介の闇を知り、有能であるが故に最も危ない人物として始末する為に動き出します。
犯罪史上類のない事件を起こした朝倉恭介を狙って、スリリングなストーリーが展開されます。



(あらすじ)
恭介に変わって日本でコカインの密輸を取り仕切っていた田代が、恭介が心配していた通り暴走し始めた。完璧な取り引きルートは、自分の存在を表に出さないことが前提だったにもかかわらず、田代は自らバイヤー接触しコカイン密輸に関する痕跡を残してしまった。恭介は、危ないと感じ手仕舞おうとし、まず田代を組織を利用して始末する。しかし、その始末の詰めが甘く、田代の遺体が警察の知るところとなる。
一方、川瀬雅彦は、コカインに関する記事を書くため南米に取材で訪れていたが、取材で乗っていたヘリ墜落事故を切っ掛けに、衝撃的な事実を入手する。それは、数年前に起きたコブラによるマフィアボス狙い撃ち事件に、朝倉恭介なる日本人が関わっていると言うことだった。雅彦は、同時に田代の事件も関係があるのではとジャーナリストとして鋭い勘が働く。
もう一方では、CIAが最も危険なマフィアと繋がりを持つ恭介に、工作員として最高の訓練を施したことについて、CIA始まって以来のスキャンダルとして、秘密裏にあらゆる手段を用い恭介を消しにかかる。
恭介は、自分の身に降り掛かる危険に気がつかず、日本で最後のコカインピックアップをした後、国外へ逃亡する予定だった。しかし、どこからか今までの完璧さが雪崩の如く崩れてくる。それは、最も信頼を寄せていたファルージオの死から始まったのかもしれない。



このあと、雅彦、日本の警察、CIAによる恭介の追跡が始まりますが、恭介の正体が暴かれる過程や逃走劇、そして恭介の最後は是非是非本を読んでみてください。
悪を正当化する気はさらさらありませんが、恭介には逃げ切って、闇の世界に君臨し続けてほしいと願ったのは私だけでしょうか・・・

朝倉恭介―〜Cの福音・完結篇朝倉恭介―〜Cの福音・完結篇
(2001/03/02)
楡 周平

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クレイジーボーイズ 著:楡 周平

楡周平氏の比較的新しい作品をご紹介いたします。昨年書かれた「クレイジーボーイズ」です。

話の核となる部分は、「特許権」と「石油」です。本書で登場する特許とは、「水素自動車の画期的な燃料タンクの開発」で、これを搭載した水素自動車が今のガソリン自動車へ置き換わったら、クリーンな燃料である為環境問題が一気に改善されます。それ以外にも、資源国に頼らず自国で水素プラントを建設すれば燃料がまかなえるため、そのインフラ整備として内需が拡大し経済効果が見込めます。また、石油の利権を巡って、中東諸国に影響力を及ぼそうと、紛争の火種をまき散らす連中を無力化でき、結果的に中東に平和をもたらすことが出来ます。
しかし、世の中にはこれを快しと思わない人たちがいるのです。まずは、オイルメジャー。儲けとなる石油が売れなければ、今まで築き上げたものが一瞬で崩壊してしまいます。そして、軍もまた容認できないでしょう。オイルメジャーから多額の献金を受けており、また中東に平和が訪れてしまったら、軍事産業そのものが成り立ちません。中東の紛争は必要悪ということです。
これを背景として、ある殺人事件が発生し、その息子の犯人探しが始まります。



(あらすじ)
柴山教授は、オリエンタル工機での研究の結果、画期的な水素燃料タンクを開発し特許を取得した。しかし、よく会社と社員で争われる「特許権の持ち主」問題となり、5年もの間法廷の場で争ってきた。ところが、裁判も大詰めで最高裁まで審議が進んでいる最中、柴山教授は何者かに殺されてしまった。しかも、人には言えないような行為の果ての無惨な殺人だった。プレイ中の事故を隠滅する為に海中に投げ込まれたのだ。柴山教授は、特殊な性癖の持ち主で、「ゲイ」だったのだ。
たった一人の遺族である息子 哲治もそれを知った時は衝撃的だった。しかし、いろいろな葛藤があるにせよ、唯一の肉親が殺されたのだ。しかも、莫大な金が渦巻く訴訟中という時期にだ。哲治は学校の仲間、それから柴山教授の訴訟費用をバックアップしてきた環境保護団体「グリーンシーズ」のメンバーの協力を得て、犯人を追求するため、随分と大胆な方法に打って出た。その方法とは・・・



読んでいる最中は、「なんでこんな方法で強行突破するのだろう」と思っていましたが、最後の展開がしっかりとしていたので、不満が帳消しとなりました。読まれていない方は、何のことだか分からないと思いますので、是非読んでみてください。おもしろい本です。

クレイジーボーイズクレイジーボーイズ
(2007/08)
楡 周平

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ターゲット 著:楡 周平

猛禽の宴」の続編にあたる「ターゲット」をご紹介します。

個人的には前作程インパクトは受けませんでしたが、内容的には面白く、主人公である朝倉恭介の知的でかつ強靭的な力とスリリングな展開を味わうことが出来ました。また、新たな発見もありました。それは、東アジアの国際関係についてです。とりわけ、「中国、北朝鮮そしてアメリカ」の関係は、現実社会でも微妙な関係で、小説の中では北朝鮮を必要悪と位置づけています。
必要悪とは主にアメリカから見た意見で、北朝鮮はあったらあったで核をちらつかせきて、国際情勢を不安をにし、かといって攻め込めば容易に陥落するだろうが、今度は米軍を北朝鮮の監視のため(元々はロシアだったが)に日本、韓国に常駐させるだけの大義名分がなくなり、中国の台東を許してしまう。このため、北朝鮮をつぶれない程度に生かし続ける必要がある。これは、小説の中での話ですが、現実社会でもうまく説明がつきます。まさに今のアメリカ外交がそうなのでは・・・



(あらすじ)
アメリカ中央情報局(CIA)は、国内に中国製武装機器が多く出回っていることを憂慮し、またそれに中国高官が関わっているらしい情報を掴み、早々にアジアへ工作員を送ることを検討していた。その工作員候補として、朝倉恭介に目をつけた。工作員になる条件として、もちろん戦闘能力が高いことが必須だが、誰にも触れてほしくない裏を持っている人物が適当だった。しかしCIAは、恭介があやしい顔を持っていることは掴んでいたが、コカインの密輸をしていることまでは把握していなかった。
そのころ、恭介は前回の内部抗争のあと、ある仕事の片をつける為にクアラルンプールに行っていた。しかし、そこから日本へ帰国途中にまんまとCIAに確保されてしまい、工作員として働くこととなる。恭介の知恵を持ってしても、工作員を回避する手段がなかった。
恭介が工作員としての訓練を受けている頃、日本海側で北朝鮮の工作員と思われる遺体が発見された。確認した結果、生物兵器を所持していた。その兵器の解析の結果、今までにない全く新しいタイプのウィルス兵器で、また日本ではなく日本にある米軍基地を狙ったものだということが分かった。北朝鮮は、この兵器を7カ所ある基地へばらまき、軍の無力化をねらったのだ。
CIAは、北朝鮮は再度実行に移すと考え、それを阻止する為に日本人であり、訓練をトップ成績でクリアした恭介を送り込んだ。ここでアメリカが、なぜ北朝鮮の宣戦布告ととらずにその行為阻止に注力したかは、前段でお話しした「北朝鮮=必要悪」だからだ。
ここから、CIAと恭介の北朝鮮テロ阻止へ向けて展開される。



阻止への展開については、ぜひ本読んでご覧ください。

この本を読んで話の展開に疑問を持ったことがあります。北朝鮮工作員のリトライするタイミングが、どうも不自然なのです。本国からのウィルス兵器散布指示では、日本はちょうど台風が通過しているときで、交通手段等混乱することを考えれば、テロが成功裡に終わらない可能性があるはずです。どうしてこのタイミングだったのか、最後まで分からずじまいでした。

最後に、CIAが恭介に訓練を施したことに驚愕します。それは、恭介がマフィアボス ファルージオと親交があったことが分かったからです。この続きである最終編「朝倉恭介(本タイトル)」を、いまから読みたくてたまりません。読み終わったら、またご紹介したいと思います。

ターゲット (宝島社文庫)ターゲット (宝島社文庫)
(2001/01)
楡 周平

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猛禽の宴 著:楡 周平

またまた、楡周平氏の本の紹介です。本当に楡周平にはまっていますね。このまま、全ての本を読み倒そうと思います。

今回ご紹介する本は、処女作でベストセラーになった「Cの福音」(前にご紹介してます)の続編で、「猛禽の宴」です。前作では、朝倉恭介による鮮やかなコカイン密輸の話でしたが、今回は恭介が関わる組織の内部抗争を題材としています。
マフィアの抗争場面で必ずある、殺戮、惨殺場面が、楡周平のリアルな表現方法により、想像しただけでも目を背けたくなるようなものとなっています。読み終えたいまでも、その部分については頭から離れません。(基本的に恐がりですので・・・)
結末は主人公である朝倉恭介の知的で強靭的な行動によって、内部抗争に終止符が打たれますが、読んでいる私が日本人ということもあり、その様は大変爽快です。一気に読みたくなるようなストーリーとなっています。
ストレス発散したいと思われている方、一度ご覧になられてはいかがでしょうか。



(あらすじ)
台湾マフィアとの騒動の後、何事もなかったようにコカインの密輸を続けていた朝倉恭介が、ファルージオ(全米マフィアの頂点立つ人物であり、恭介を息子同然と考えている恭介のパートナーでもある)に呼ばれ、アメリカに遊びにきたとこから始まる。
ファルージオが君臨してから四半世紀となり、ファルージオ自身も後継人を探し始めていた。そんな中、部下の一人であるコジモが、密かにボスの座を虎視眈々と狙っていた。しかし、コジモはファルージオとは決定的に考え方が違い、知的であるファルージに対し、コジモは暴力的で「恐怖」こそ組織を保つ唯一の手段と考えている。もちろん、ファルージをも「恐怖」は統率には必要としていたが、コジモのそれとは全く別物だった。
コジモは、自分のテリトリーを荒らし始めていた連中に制裁を加える事件を起こし、狙われた連中は、もちろんのこと報復にでた。狙いの対象はコジモではなく、いきなりトップであるファルージオを設定し、命まで奪うことは叶わなかったが、下半身不随という重傷を負わせることが出来た。
コジモにとっても連中の行動は予想外であったが、これでファルージオの引退が現実的となり、自分がボスに指名されることを期待していた。しかし、フォルージオの指名は別の部下アゴーニ言い渡された。コジモはもちろん不服とし、「恐怖」を利用してフォルージを狙った連中にアゴーニを狙わせた。これで、まんまとコジモはボスの座を手に入れることが出来た。
ボスになったコジモは、恭介の存在、日本でのマーケットの存在を知り、我が手中に収めるべく恭介に「恐怖」を見せつけようとした。しかし、コジモは恭介を甘く見すぎていた。軍隊として訓練を受けている恭介にとって、コジモがしむけた連中を倒すことはさほど難しくない。このとき、恭介はとんでもない事実を知ることになる。そう、ことの発端からコジモがボスになった経緯を。恭介は久々に怒りを覚えた。
ここから、鮮やかかつ大胆な行動によるコジモ抹殺劇が始まる。



続きは、本をご覧ください。爽快感を味わえます。

新装版 猛禽の宴 (宝島社文庫)新装版 猛禽の宴 (宝島社文庫)
(2005/07/25)
楡 周平

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クラッシュ 著:楡 周平

クーデターの続編である「クラッシュ」も600ページに渡る長編小説でしたが、読み応えがあり完成度が高いと思いました。内容も実際にあり得ない話ではなく、現在のネット社会問題をうまく表現していると思います。

「クラッシュ」は次のテーマに沿って書かれていると思います。
 ・航空機(開発)の弱点
 ・ネット社会の弱点
今飛んでいるハイテク飛行機は、ほとんどコンピュータ制御によってコントロールされています。従って、その中枢を司るコンピュータは複数台搭載することによって非常事態を回避し、システム停止することは許されません。もし、システム停止すれば、それは「死」を宣告されたも同じです。
また、インターネットの出現は「人類が火を手にして以来の革命」といわれ、現社会ではなくてはならない道具です。しかし、世の中には非社会的行為を行なうものも少なくなく、コンピュータウィルスという副産物を産んでしまいました。ウィルスによってネットが壊滅的な打撃を受けたとき、社会のもろさが露呈します。

主な登場人物は、クーデターの主人公であった川瀬雅彦、航空機制御ソフトを開発するU.S.ターン・キー社社長のグレン、その恋人キャサリン、そしてグレンの浮気相手アンジェラ。
今回の主人公はキャサリンで、ことの発端はグレンの浮気から大事件へと展開されていく。雅彦は、現場主義のジャーナリストから最愛の人ユキを追って記者へ転向する。



(あらすじ)
場面は、ハイテク機「AS-500」の着陸失敗から始まる。この事件によってU.S.ターン・キー社グレンは、航空会社からソフトの見直しを要求される。グレンは恋人キャサリンとこのベンチャー企業を経営しており、キャサリンはソフト開発において最も重要で、ソフト内容を最も熟知した人物でもあった。しかし、この非常事態時には、秘書アンジェラとの浮気がばれており、見直し作業には全く関わらず、行方知らずとなっていた。
アンジェラは、キャサリンからグレンを奪った形だが、心のどこかにまだ不安があり、ある写真を切っ掛けにキャサリンへの嫌がらせを実行する。その写真とは、グレンと行為を行なっている時の裸の写真だ。アンジェラは、なんとこの写真をネットで公開してしまう。
これを知ったキャサリンは、グレンの仕業と勘違いし、ある計画を実行する。この計画はこそが世界を震撼させるものとなり、個人的な復讐が、世界を混乱へ貶め、遂には自分自身にも衝撃的な結末を迎えさせることになる。
その計画とは、見直したソフトをある手口で改竄し、そのソフトを搭載した飛行機2機を操縦不能に貶める。そのうちの1機は、結果的に墜落してしまった。次に、世界がこのニュースで騒然としているときに、主要メディアへ犯行声明を伝え、「解決策はあるホームページにある」とそのサイトへ不特定多数のアクセスを誘導する。そのサイトには、実はコンピュータウィルスが仕組まれており、感染したPCはある時間を持って全てのデータからOSまでもが削除されてしまう。



最終的には、もう1機の飛行機は無事着陸に成功し、ウィルスについても最悪事態は回避されます。そこまでのいきさつについては、是非この本を読んでご覧ください。エピローグもしっかりまとめられていますので、本当にこの本はおすすめです。

新装版 クラッシュ (宝島社文庫)新装版 クラッシュ (宝島社文庫)
(2005/07/25)
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クーデター 著:楡 周平

最近、楡周平にはまっています。今回は第2作品目の「クーデター」についてご紹介します。

これもまた、「Cの福音」と同類のジャンルで、クーデターという反社会的行為をテーマにし、生々しく描写されています。この本で描かれているクーデターは、軍事力にものを言わせて行なうもので、必然的に殺戮、虐殺などの惨たらしい光景が随所に現れます。楡氏の表現方法が的確で、その場面が頭の中に正確に想像できてしまい、思わず目を塞ぎたくなる衝動にかられます。
また、この本では暗に日本の防衛システムについて警鐘を鳴らしているように思います。もし、この本で展開されたような行為が実際日本で起きたならば、どのような事態になるのだろうか。おそらく、楡氏が書くように、平和ボケした日本国民は、当事者にならない限り普段通りの生活を送り、国はどう対処したらいいか奔走するのみで、慌てふためき結局なかなか判断が出来ずじまいなのだろう。

長編小説であるため、少し飽きがくる場面もありますが(特に前半の前置き)、いよいよ行為が進行し始める後半は、本にのめり込んでしまい離せなくなります。みなさんも、自国の危機管理について、この本といっしょに考えてみてはいかがでしょうか。



(あらすじ)
日本の宗教団体、龍陽教とロシアン・マフィアの間で行なわれる武器取引の場面から始まる。龍陽教の目的は、「腐りきった日本を立て直す」ことにあった。膿を出し切る為には、多少の犠牲は致し方がない。日本再生をすべく、「クーデター」を企て、それに向けて着々と布石を打っていく。もちろん、裏で与党とつながりを持っており、龍陽教の息のかかった国会議員を何人も送り込んでいた。しかし、政界とつながりを持ったのは龍陽教からではない。票欲しさの与党、民主共和党からだ。
計画を実行に移す際、幸いにも米国と北朝鮮の間で緊張が走る出来事が発生。龍陽教、教祖である篠原天佑は、天は我に味方したと言わんばかりに急遽実行に移した。警察官に多数の死者が出る事件が能登で勃発。もちろん、龍陽教の兵器による攻撃だ。その際、リポーターとして現地へ入っていた女性が、標的にあい射殺される。その恋人であり、世界各国を周りあらゆる戦場を目の当たりにしてきたジャーナリスト、川瀬雅彦が真実を暴くため現地入りする。犯人像が見えない中、身を危険にさらし犯人を突き止めていく。

クーデタークーデター
(1997/02)
楡 周平

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Cの福音 著:楡 周平

いままで、楡周平氏の作品を2作ご紹介しましたが、今回は処女作である「Cの福音」を取り上げたいと思います。デビュー作にして大ベストセラーになった本でもあります。

今まで読んだ2作品は、社会問題を題材にし、著者が鋭い切り口でストーリを展開しており、読者へ訴えかけたり考えさせるようなものでしたが、作家デビュー当時の作品は全く別物で、同じ作家の作品とは思えませんでした。

私は社会情勢や金融経済情勢を題材にした本が好みで、楡周平氏の作品にも好感を持っていましたが、この作品により新たな楡氏や自分自身他分野の小説でも楽しく読めることが発見できたことで十分満足しています。

作品の内容は、特に何かを訴えかけるものではなく、麻薬を題材にした小説で、主人公である「朝倉恭介」の鮮やかな犯罪方法を生々しく表現したものとなっています。



(あらすじ)
「C」とはコカインのことで、このコカインから得られる至福の感覚を餌に人を操り金儲けをする恭介は、一貫して冷徹でありまた聡明でもある。恭介が考えだした麻薬密輸ルートとその販売方法はほとんど完璧であったが、ある弱点から中国系マフィア朱にそのネットワークの存在を知られてしまう。素晴らしい密売ルートを手に入れたい朱は、あらゆる手を使ってそのからくりを暴こうとする。一方、恭介は薄々感じはするが、まさか自分のところにまで到達できないと鷹を括っていた。
お互い人を人と見ず、自分の私腹を肥やす為の道具として扱い、不要となったら処分する。そんな彼らがクライマックスで直接対決することになる。結果は、恭介の方が1枚も2枚も上手だった。




途中から恭介のアイデア、行動に引き込まれ、なかなか読み応えのある本でした。
みなさんも、楡周平の世界を覗いてみませんか?

Cの福音Cの福音
(1996/01)
楡 周平

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